[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
4=i
「じゃあ、死んで。」
彼女は僕に言った。
セリフを読んでいるかのようにそう言った。
僕は、鏡の前にいる彼女を不覚にも愛してしまった。
心の底から、いとおしく思った。
彼女のためなら、僕は、
悪魔にでもなれるんじゃないかと思うくらいにね。
「本当に?」
「本当に。」
水に濡れた彼女の体は美しかった。
骨のように細い手足と、
人よりも長いその指に何度触れてもらっただろう。
何度、共に痛みに耐えてきただろう。
彼女の事なら何でも知っている。
「好きだ。愛している、君を。」
「そう。」
「好きだ。」
彼女は中途半端が嫌いだ。
物事は、0か1か。
その境に僕らはいない。
「好きなら。死んでよ。愛している証拠を見せてよ。」
「・・・・。」
「生きている間は何とでも言える。
君が今ここで死んでくれるのなら、
君が僕を愛してくれている事を信じる。」
美しい。誰よりも。
「・・・・。
君は変わらないね。」
「そう?」
「うん。」
「僕は変わったと思うけど?」
「?」
「昔の僕はこんな切り傷持ってなかった。」
「ああ。それ。」
「うん。」
「・・・・わかった。」
「もし、幽霊とかに慣れたのなら、僕を呪ってね。
骨の髄まで、脳みその血液まで。
僕はそれで君の愛を感じられる。」
「いいね、それ。」
「でしょ?」
生まれたときに持ったこの可笑しな体を僕は愛してしまった。
美女と野獣を同時に、同じ檻の中に押し込んで、
部屋が散らかれば、胃液をそこに流し込んだ。
好きだ。
殺/完
解説
半陰陽な男の子が、
自分の中の女の自分に恋してしまったというとても歪んだ話。
男の子は彼女のことがとても好き。
彼の気持ちが彼女に伝わる方法=死。
も最初から彼はわかっていた。
その日は雨。
傘を忘れた彼は雨の中を時が止まるようにゆっくり歩いて帰宅。
家には殺伐とした世界があって、彼と彼女はうんざりだった。
悲しかった。消えて欲しかった。
でも、どう足掻いても消えてはくれないのがわかりきっているので、
自分たちから消える。
というのは裏設定。
そして、彼女は彼がぐったりしたあと、
自分が生きることを信じている。
かなり衝動的な短編。
長編書きたい。
ヴォネ復活したい。
PR
COMMENTS
TRACKBACKS